でも、あきらめないで
とはいえ、管理職になろうと思っても簡単になれるわけではない。正社員ではない人もいるし、家庭の事情で思うように働けない人だっているだろう。
「でも、あきらめないで」
そうエールを送るのは、ヘルスケア関連事業を展開している企業で部長を務める女性(62)だ。男女雇用機会均等法の施行前に大学を卒業。就職先がなかなか見つからなかったが、最終的に「一般企業の事務職に引っかかった」。そこで出会ったのが、当時は珍しかった女性課長だ。「ものすごくかっこよかった。管理職になるのが目標になりました」
その会社には7年間勤めたが、結婚後、夫の転勤のため退職。子育てをしながらフルタイムで働ける会社を探したものの正社員にはなれず、派遣社員になった。その後、非正規雇用として10年近く働いた会社には正社員への登用制度があったが、上司からは「総合的な判断」として無理だと言われた。
息子が小学生で、残業できないことがマイナスに捉えられたのだろうと考えた。転職エージェントに相談してもオファーはこなかったが、英語の勉強を続けていたためTOEIC750点のスコアとともに英文の職歴書を提出したところ、現在勤める会社に採用されたという。
経済まわしている実感
いま勤める会社は、かつて非正規雇用で働いていた会社の取引先だ。女性が半数以上を占め、女性管理職も3割超。ジェンダー平等の企業風土があって働きやすそうだと漏れ伝え聞き、「いいな」と思っていたという。
40歳で入社し、2年後に課長、その6年後に部長になった。そして定年後再雇用のいまも管理職として働く。憧れだった管理職は責任が重くなりプレッシャーを感じるものの、やりがいも大きいという。「組織を率いて経済をまわしていると感じられるし、交渉力や調整力がついた。人間としても成長できる」
自身の経験を伝えて後輩たちの背中を押したいと、「いくみ@女性管理職&ブロガー」という名前でブログを始め『女性管理職が悩んだ時に読む本』も出版した。女性はこう話す。
「男性社会の会社で苦労なさっている女性もいると思う。自分が活躍できそうな会社に転職する、という道もあるかもしれません。人生一度きり。『私には無理』と言わずに、何事にも体当たりでチャレンジしてほしい」
(フリーランス記者・山本奈朱香)
※AERA 2024年6月17日号より抜粋