日本では女性管理職の割合が伸び悩んでいる。管理職に就いている女性の声から課題が浮き彫りになった一方、明るい兆しもあった。AERA 2024年6月17日号より。
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女性が管理職になってより生き生きと働くケースは増えているのだろうか。
世界経済フォーラムが毎年公表する「ジェンダーギャップ指数」(2023年版)で日本は146カ国中125位となり、過去最低順位に。女性管理職等割合(令和4年度雇用均等基本調査、課長相当職以上)は12%台で伸び悩んでいる。
この状況を受け、一般社団法人定年後研究所とニッセイ基礎研究所は23年、共同研究「中高年女性会社員の活躍に向けた現状と課題」を実施。調査対象は、従業員500人以上の企業に正社員として勤める45歳以上の女性(有効回答数1326人)だ。
管理職に就いている女性に課題を聞くと「責任が大きくなり、精神的な負担が大きい」「労働時間が長くなり、家庭との両立が困難」のほか、「これまで会社に女性管理職がほとんどおらず、ロールモデルがいない」「経営トップが、女性登用の意義や必要な体制について十分理解していない」などが挙がった。
管理職といっても権限がなかったり、賃金があまり上がらなかったりするケースもある。部下に残業を頼みにくいため、管理職が仕事を引き受けざるをえないという人もいる。管理職志向やキャリア意識に関する調査を担当したニッセイ基礎研究所の坊美生子・准主任研究員は、こう指摘する。
「働き方改革が中途半端だと、管理職にいろいろなことが集中してくる。組織自体の改革をしないと、女性も男性もやる人がいなくなると思います」
だが、同調査では明るい兆しもあった。管理職経験のある女性に自らの経験について聞いたところ、7割近くが「人生経験としてプラスだ」、6割強が「管理職になって初めて見えてきたことがある」と答えたという。
坊さんもインタビューした女性たちから「やって良かった」「自分の都合に合わせて仕事を計画的に進められるから、管理職のほうが仕事しやすい」といった声を聞いた。「管理職経験が『人生経験にとってプラスになった』という回答が予想以上に多くて、嬉しく感じています。管理職に対してネガティブなイメージを持っている人が多いかもしれないが、プラスの情報を伝えていけば意識も変わっていくのでは」と期待する。