AERA 2024年6月10日号より

 しかも、減税なら消費税率の一時的な引き下げのほうが国民に歓迎されやすいうえ、システム的な対応も比較的容易。だが、財務省を口説き落とすのは無理だと判断したのか、岸田政権は時限措置の定額減税という手を選んだ。事務処理にも特別な対応が求められ、実施までに半年もの歳月を要するハメになった。

 さらに始末が悪いことに、政府は6月1日に改正省令を施行し、事業者(給与所得者にとっては勤務先)に対して減税額の給与明細への明記を義務づけることにした。首相いわく、「給与や賞与の支払い時に減税の恩恵を国民に実感いただくことが重要」とのことだ。果たして、今回の減税はどこまで実感できるものなのか? 具体的な減税方法について、説明しておこう。

多少は手取りが増える

 会社員はもとより、配偶者の扶養に入っていないパート勤務者やアルバイトも含めた給与所得者は、所得税が今年の6月から、住民税が今年の7月から減税されることになる。6月の給与から源泉徴収される所得税から3万円が差し引かれ、引ききれない場合は翌月以降の源泉徴収分から残額が減税される。

 たとえば東京都在住の30歳会社員で月給の額面が38万円(年収456万円)だった場合、月々の源泉徴収される所得税は本来なら9千円だ。定額減税の実施によって6〜8月の所得税負担はゼロで、9月は9千円から残る3千円が差し引かれた6千円になる(ボーナスは考慮せず)。4カ月間の期間限定ではあるものの、多少なりとも手取りが増えることは確かだ。

 住民税については、本来の納税額から1万円の減税分を差し引く。そして、その金額を11分割した金額を今年7月〜来年5月まで納付する。所得税のパターンとは違い、こちらはあまり税負担が軽くなった印象を抱きにくいというのが実情だろう。

 残念ながらフリーランスや自営業者などの事業所得者は、減税の恩恵を受けるのが先の話になりそうだ。来年の2月17日〜3月17日に所得税(24年分)の確定申告を行った際、3万円の特別控除が適用される。ただし、予定納税を行っている事業所得者については、今年の7月徴収分から減税を受けられる。

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