プロレス観戦で気付いた料理という文化(イラスト:サヲリブラウン)
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 作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

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 月に1度か2度は必ずプロレス観戦に行っています。ここ3年ほどのことですが、毎回とても楽しい。大人になってから新しい趣味が見つかったことは、幸運だと思います。

 プロレス観戦のあとは、同行者たちと感想戦を兼ねて食事に行きます。プロレスは開催できる会場が限られているため、会場の近くで探すとなると、店の選択肢はさほど広がりません。居酒屋、インド料理、アメリカンダイナーなど。その中で、最も気分が盛り上がるのが中華料理だということが、最近判明しました。風邪をひいたら体にやさしいものが食べたくなるように、心身にエネルギーが満ち満ちた時はことさら、猛烈に食べたくなるものが私にはある。それが中華料理です。

 火力や香辛料などが食材にエネルギーを注入したような一品をずらりとテーブルに並べ、同行者とシェアしながらいただきます。先日はイカに薄い衣をつけて揚げたものに豆チ(豆へんに支)(黒豆に塩や麹や酵母を加えて発酵させた調味料)をまぶしたひと皿が驚くほど美味でした。モリモリ食べながら、あの試合のここがよかった、あそこが最高だったと語り合う幸せ。

 インド料理屋さんや居酒屋でも興行後の感想戦を行ったことはありますが、食後の心とおなかの満足度が完全に一致するのは中華料理。円卓だと尚ヨシです。

 唯一の例外は、後楽園ホールのあとのTGIフライデーズ。ホールの隣にあり、大人数でもすぐ入れることが多く、便利でよく使っています。肉料理がメインで、その他のメニューもパンチのあるものが多く、中華ほどではありませんが、やはり心と体のエネルギー値を一致させてくれるような感覚を覚えます。

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ジェーン・スー

ジェーン・スー

(コラムニスト・ラジオパーソナリティ) 1973年東京生まれの日本人。 2021年に『生きるとか死ぬとか父親とか』が、テレビ東京系列で連続ドラマ化され話題に(主演:吉田羊・國村隼/脚本:井土紀州)。 2023年8月現在、毎日新聞やAERA、婦人公論などで数多くの連載を持つ。

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