日本有数の観光地になった富士山。その富士山と日本らしい風景を一度に撮影できるスポットにインバウンド客が殺到している。一部の客の振る舞いに、住民たちが苦慮している。現地を取材した。
【現場の写真】なぜココなの? カメラを構えるインバウンド客たち
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富士急行線の河口湖駅は、富士山観光の玄関口だ。五月晴れのある日、すぐ近くのコンビニ「ローソン河口湖駅前店」に、外国人観光客が集結していた。富士山を背景にSNS映えする写真が撮れる、という。ざっと50人はいるだろうか。
「今日は富士山がとても奇麗です。やっぱり来てよかった!」
そう話すのは、フィリピン人のイゼルさんだ。4日前に来たときはあいにくの雨で、富士山も雲で覆われていた。そのため、再び東京からやって来たという。
「ローソンのバックに富士山」が大人気
オランダ人のボウさんも「ここから見る富士山はすてきですね」と言う。ただ、少々うんざりした様子で、こう続けた。
「人気の撮影スポットとは知っていましたが、こんなに観光客が多いとは思いませんでした」
特に人が集まるのが、店舗前の道路の向かいの歩道だ。ここからカメラを構えると、富士山とローソンの青い看板が画面にぴったり収まる。富士山そのままではなく、ローソンの青い看板が入るのが、外国人観光客には「日本ならでは」で「たまらない」らしい。
町は警備員を配置
この道路を横断歩道を使わずに渡る外国人が絶えない。もともと交通量が多いうえ、路線バスや観光バスも次々と通り過ぎる。交通事故を懸念した山梨県富士河口湖町は昨年6月から警備員を配置した。
取材中、道路を渡ろうとする外国人に対し、「ドント・クロス・ザ・ロード!(道を渡るな)」と、声を張り上げて注意する警備員の姿を何度も目にした。
歩道から道路にスマホやカメラを突き出すように構える外国人もいて、バスと接触しそうになる。町によると、車両との接触事故も実際に起きている。
注意すると激高して罵声
ここに外国人観光客が集まるようになったのは、昨年1月ごろから。タイ人のインフルエンサーがインスタグラムに写真を投稿したのがきっかけらしい。富士河口湖町観光連盟の堀内淳平さんは言う。