「命を危険」を感じた映画撮影も
――ターニングポイントになった作品はありますか?
それぞれの作品が印象深いのですが、映画「天と地と」(1990年)に出演させていただいたことが一番大きいかもしれません。カナダでロケをしたのですが、戦場でのシーンの撮影で初めて馬に乗ったときは正直、命の危険を感じるくらい怖かった。装備する甲冑は20キロの重さがあって、右手にはなぎなた、左手だけで手綱を握って。小動物に馬が驚いてバランスを崩したこともありました。でも、この作品に巡り合えたことで「何でも挑戦しなきゃダメだ」と、覚悟が決まりました。
――財前さんは役柄に合わせて演技の幅が広いことで定評があります。心掛けていることはありますか。
普通の人の演技が一番難しいと思うんです。喜怒哀楽をしっかり表現できるようになるために、30歳まではいろいろな役をやって、芝居を磨かなければいけないと考えていました。29歳で「ジューン・ブライド」(TBS系)に初主演することになったのですが、はじめはまだ主演は早いと思って断っていたんです。生意気ですよね(笑)。昔は変なこだわりがありましたね。「台本を現場に持ち込まない女優になる」とか。いろいろ模索していたのですが経験を重ねると、「台本の芯になる部分をつかんでおけばいい」と思うようになって。芯をつかんで、自分なりの振れ幅で演じてみようと考えたら肩に力が入らなくなりました。宮部みゆきさん原作の「火車」がドラマ化(94年、テレビ朝日系)されて、カード破産をした女が別の女性になりすますという役で出演することになったのですが、「なぜこの人はこんな行動をするんだろう」と考えながら役作りをしていました。そんな中で、「私、あなたになるの」というセリフが自然に浮かんできて、セリフに加えていただきました。役をいただいたときにいろいろ考える作業が楽しいんですよね。