AERAの連載「2024パリへの道」では、今夏開催されるパリ五輪・パラリンピックでの活躍が期待される各競技のアスリートが登場。これまでの競技人生や、パリ大会へ向けた思いを語ります。1人目は、日本競泳史上最年長の33歳で代表の座を射止めた鈴木聡美選手です。AERA 2024年4月29日-5月6日合併号より。
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日本競泳史上最年長の33歳で五輪代表に内定した。それも、代表選考会で自己ベストを更新。2大会ぶりの五輪を前に、絶好調だ。
2012年のロンドン五輪でメダル3個を獲得したが、16年リオ五輪では結果を残せず、東京五輪は出場も逃した。引退も頭をよぎったという彼女が競技を継続できたのはなぜなのか。
「自分の記録を超えるためです」
高校までは全国区では無名の存在だったが、大学1年の09年に女子100メートル平泳ぎで日本記録1分6秒32をマーク。ロンドン五輪以降は、結果を残せずにいた。
「ロンドンのときの泳ぎが一番気持ち良かったし、一番良かったときの泳ぎを崩すことは相当な勇気がいります。負のサイクルに陥ってしまって」
16年のリオ五輪では、「調子が上がりきらず臨んで、正直、不安しかなかったです」。結果、決勝に進めなかった。
「本当に悔しくて、『これ、私じゃないな』と思いました。ロンドンの泳ぎを求めてもできなかった。じゃあ新しいトレーニングや、泳ぎ方をしようと試し始めました」
その後、東京五輪はコロナ禍で1年延期に。
「世界中が大変な時期に、競技をしていていいのかなと迷いました。『スポーツは悪だ』みたいな風潮もあって、競技に専念できなくて」
東京五輪の出場を逃した。それでも、監督、トレーナーは応援し続けてくれた。
「これだけトレーニングできていて、けがも病気もない。17年以降、パフォーマンスは確実に上がっている。大丈夫だ!」と。鈴木もそう信じて、もう少し頑張ってみるかと思えるようになった。