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 長生きするために食事で何を心がけるべきか。精神科医の保坂隆さんは「よく噛んで食べることが何よりも大切だ。噛むことの大切さを考え、伝えることを目的にした日本咀嚼学会には『卑弥呼の歯がいーぜ』という標語がある。そこでは、肥満防止、がんの抑制、全身の体力向上など、噛むことの8つの効用を伝えている」という――。

※本稿は、保坂隆、西崎知之『おだやかに80歳に向かうボケない食生活』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

古代人は1時間かけて1回の食事で約3900回噛む

 毎日の食事でとくに重要なのは「よく噛かんで食べること」でしょう。

 個人差はあるものの、一般的に年齢を重ねるとともに歯が欠けたり、舌の運動機能や唾液の分泌も悪くなる傾向があります。

 その結果、食べ物がうまく飲み込めない「嚥下(えんげ)障害」を起こしやすくなります。

 嚥下障害が進むと、誤嚥といって、食べ物が食道ではなく気道に入ってしまい、肺炎を起こすことがあります。これを誤嚥性肺炎といいます。

 この言葉は最近、よく耳にするのではないでしょうか。誤嚥性肺炎は高齢になるほど罹患する比率が高くなります。いまや日本は世界一の超高齢社会です。誤嚥性肺炎は、悪い意味でのその象徴なのです。

 では、誤嚥を防ぐためにはどうしたらいいのでしょうか。

 答えはとてもシンプルです。

「よく噛んで食べること」。これが重要で大切なことになります。

 古代の日本人の主食はおこわで、干物、くるみや栗などの硬いものを食べていたとされています。硬いものはよく噛まなければならないので、古代人は1回の食事で噛む回数は約3900回、時間にして1時間ほどかけていたと考えられています。

 平安時代から昭和の戦前までの間は、米や麦、魚や野菜を主に食べてきました。古代に比べると、噛む回数はぐんと減ったと考えられています。とはいってもそれは1500回ほどで、食事の時間も20~30分はかかっていたと推測されるのです。

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