竹増貞信/2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
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「コンビニ百里の道をゆく」は、54歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

【写真】ローソンは物流対策として「ワタミの宅食」と協業を始めた

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 トラック運転手の残業規制強化で物流の停滞が予想される「2024年問題」が話題になっていますね。

 ローソンでは対策として、ワタミ株式会社が運営している「ワタミの宅食」の商品を製造工場から首都圏の営業所へ配送する「物流シェアリング」を4月6日から開始しました。

 東京都、埼玉県の営業所約20カ所へ、1日平均で約3200食を配送します。

 ローソンでは昨年12月から、CO2排出量の削減やコスト抑制につなげるため、チルド・定温商品の配送回数を1日3回から2回への切り替えを進めています。このことで一部の配送車に非稼働時間が生まれ、その時間帯の有効活用という意味で協業先を探していたんです。

ローソンは物流対策として「ワタミの宅食」と協業を始めた

 一方でワタミさんの事情としては、「ワタミの宅食」は、土日祝日は自炊や家族で食事をする機会が増えるなどの理由で配送数が減少し、1台当たりの積載効率が低いという課題があったそうです。そこで「ぜひやりましょう」ということになりました。

 実現は「異業種だからこそ」という面もあります。「何を運んでいるか」「それはどれくらいの量か」というような企業秘密に関わる点が、同業種同士ではどうしても気になってしまいます。しかし異業種だとお互いがそこにあまり踏み込むことなく協力できる。

 またコロナ禍では、外食産業が繁盛しないと町に活気が出ず、その結果コンビニにもお客さんが来ない──つまり異業種がお互い共存共栄していくことの大切さを実感しました。今回の協業はその象徴でもあると感じています。

 異業種同士で協力してより効率的なサプライチェーンを構築していくことは、2024年問題にかかわらず、やるべきこと。今回のやり方がさらにアップデートされていく。そんな社会につながればいいなと考えています。

◎竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

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