自民党の裏金事件の処分について取材に応じる岸田文雄首相
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 自民党派閥の裏金問題は真相が解明されないなか、岸田文雄首相(自民党総裁)は関係議員を処分した。恣意的な判断に党内からは「軽すぎる」「重すぎる」と不満が噴出。政権浮揚にはつながらなかった。AERA 2024年4月22日号より。

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 自民党は裏金を受け取った衆参両院議員ら85人のうち、派閥から5年間で500万円以上のキックバックを受け取っていた安倍派(清和政策研究会)と二階派(志帥会)などの計39人を党紀委員会に諮って処分をすることとし、500万円未満の議員らは幹事長による口頭注意などとなった。

真相は不明のまま

 一般企業でこの種の不祥事が発覚すれば、弁護士らでつくる第三者委員会が真相を究明し、その事実に基づいて処分を決めるのが通例だ。ところが、自民党の場合、派閥からの裏金還流システムがいつ始まり、どういう経緯で続いていたかという肝心な点が不明のままだ。

 確認された数少ない「事実」は、(1)首相を退任した安倍晋三氏が派閥の会長となって2022年4月に塩谷立元文部科学相、下村博文元政務調査会長、西村康稔前経済産業相、世耕弘成前参院幹事長の4氏との会合で、派閥からのキックバックをやめるべきだと主張。4氏が手分けして派閥所属議員の約100人に連絡した(2)安倍氏が同年7月に銃撃されて死去。それを受けて同じ4氏が8月に会合を持ち、キックバックを再開することになった──という点である。

 4氏はそれぞれ、衆参両院の政治倫理審査会に出席し、2度の会合の内容を説明したが、キックバック再開をめぐる具体的なやりとりについては、あいまいな答えに終始した。それでも岸田首相はこの4人は「裏金システムを知りながらやめなかった責任は重い」と判断、処分に踏み切った。安倍派の座長だった塩谷氏と安倍派の参院代表だった世耕氏は「離党勧告」、派閥の事務総長経験者である下村、西村両氏は「党員資格停止1年」となった。ここまでは一応、事実関係に基づく処分ではある。

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