日米首脳会談後の記者会見で握手を交わす岸田文雄首相とバイデン米大統領(写真:ロイター/アフロ)

 だが、それ以外は極めて恣意的な処分が並ぶ。同じ事務総長経験者でも、高木毅前国会対策委員長は党員資格停止半年、松野博一前官房長官は党の役職停止1年。安倍派「5人衆」の一人でキックバックが2728万円と高額だった萩生田光一前政調会長と、二階派事務総長でキックバックが1926万円の武田良太元総務相はともに役職停止1年だった。松野氏は裏金システムに関与する機会がなかったと判定され、萩生田氏は安倍派の中堅・若手の取りまとめ役として、今後も岸田首相や茂木敏充幹事長にとって「役に立つ存在」と評価されたという。

処分に政治的な配慮

 武田氏をめぐっては、福岡県内で対立している麻生太郎副総裁が党員資格停止などの厳しい処分を求めたのに対して、森山裕総務会長らが反対し、役職停止に落ち着いた。3526万円のキックバックを受けた二階俊博元幹事長は、次の総選挙に立候補しないことを表明したため、処分は見送られた。岸田首相が会長を務めてきた岸田派(宏池会)でも3059万円の不記載が確認されているが、岸田氏の処分もなかった。処分の線引きに政治的配慮があったことは間違いない。

 自民党内からは処分内容に不満が相次ぎ、野党からも「真相解明なしの処分で幕引きは許されない」といった批判が続く。世論調査でもこの処分の評価は低い。処分によって裏金問題に一区切りをつけ、政権浮揚の策を打ち出していこうという岸田首相の戦略は頓挫した。(政治ジャーナリスト・星浩)

AERA 2024年4月22日号より抜粋

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