そして入学後は、学年の先生方が息子の障害についてたくさん学ぼうとしてくださりました。ある時には「こんなところに段差があったことに気づきました!」と実際の学校生活の中で、健常者の日常では何でもない程度の段差が、足が不自由な息子にはバリアーになることを理解してくださった場面もありました。息子のことを知ろうとしてくださる先生が増え、クラスでの生活を見てもらう機会が増えるにつれ、校内での困りごとはどんどん減っていきました。はじめは校外学習時などに付き添いが必要でしたが、5年生の時には付き添いなしで雪国への宿泊行事に参加できるようになっていました。先生の意識や周りの子どもや保護者の理解により、障害のある子どもの生活はどんどん変わっていくのですね。
この学校では肢体不自由のある子どもの受け入れは初めてでした。障害のある子どもに接したことのない先生も多くいました。そこで私は、「完璧なケアを求めてはいない」と繰り返し学校に伝えていました。「障害者さま」になってしまうと、必ず保護者と教職員の間に壁ができるからです。子どもが過ごしやすい環境づくりには学校と家庭の連携が不可欠です。こちらが求めるばかりではなく「一緒に考えながら進む」という基本姿勢を保護者が持つことが、インクルーシブ教育がうまくいく秘訣ではないかと思っています。
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