全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2024年4月15日号には嬉々!!CREATIVE 代表 北澤桃子さんが登場した。
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「嬉々!!CREATIVE」で創作活動をする障害のある人は「メンバー」と呼ばれている。80人ほどが所属し、平日日中、アトリエにある自席で活動にいそしんでいる。
アートと福祉の活動に携わってから20年ほど経つ。最初の職場では「職員=支援する側」「利用者=支援される側」ではない、フラットな関係性を築いていた。その文化が、染み込んでいる。
1階にあるギャラリー併設のカフェでは作品の展示をはじめ、イラストが描かれたポーチなどの商品も販売している。そしてカフェの店員を務めるのも、接客やコーヒーをいれるのが好きなメンバーだ。
前職時代、2015年にJR平塚駅(神奈川県平塚市)から徒歩数分の場所に開店した。当時、「どうにかして認知度を高め、来店してもらわないと」と思ったと振り返る。
「でも、メンバーが自然と近くの商店街の人に毎日あいさつをし始めました。その結果、気さくに接してくれたり、困ったことがあると助けてくれたりする関係性が生まれました。構えていたのは自分だったことに気づかされました」
街で一緒に暮らす。ただそれだけで良いのだと知った、という。
「メンバーは一人の大人です。先入観なく、一対一の関係を築いていってほしいと思っています」
現在、職員は送迎担当を含めて20人前後。それぞれが物事の遂行力が高いと、繰り返し口にする。運営の要にしているのは、一に安全。その上で、メンバーとスタッフが嬉々と過ごすこと、そして、活動を広めることだ。
創作物は、そのまま作品としての販売をはじめ、パッケージデザイン化や書籍や社内報の表紙や挿絵などに使用される。その企画と商談が主な仕事だ。ライセンス契約が決まると、何万、何十万個の商品が世に広まることになる。
「多くの人の手に届くことが、本当にうれしい。ご家族、関係者の方が誇らしく感じていることも、メンバーたちの喜びにつながっていると感じています」
表現活動は、ただ表現するだけでは商品にはならない。それは、障害の有無にかかわらず、同じだ。
その工夫に尽力し、最終目標を「届くこと」に据える。それを目指し、日々、試行錯誤を重ねている。(フリーランス記者・小野ヒデコ)
※AERA 2024年4月15日号