「コンビニ百里の道をゆく」は、54歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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4月ですね。大学に入ったり、社会に出て就職したりして、まったく知らない町で初めての一人暮らしをしながら新しいスタートを切る人も多いかと思います。
大きな環境の変化がないとしても、この4月という桜の咲く季節は、皆さんも小さな頃から必ず節目としてきた季節なのではないでしょうか。小学1年生くらい、つまり物心がつき始めたくらいの年齢から、桜が咲く季節には「新しい年が始まる」「新しい友だちに会える」「もうひとつ上級生になる」などと感じてこられたと思います。
「一回リセットできる」すごくいいタイミングであることは確かでしょうね。新しく何かを始めたり、あるいは「これを機にちょっと生き方を変えてみようかな」などと考えてみたり。そして目線を少しだけ上げて、町を見てみる。そんなことだけでも、景色が変わってくる気がします。
自分だけではなく、周りの環境もリセットになる方も多い。そして咲き始めた桜も目に入る。目線を5センチ、10センチ上げるだけでも世の中が明るく、変わって見えてきて、もう一回、ポジティブにリセットできる。そこで刺激を受けて、また新しい人生にチャレンジしていける。そのために最適な季節だろうと思います。人によっては、この節目に、「ここは第1希望の大学ではなかったけど」というような思いを抱えている場合もあるでしょう。
でも、そういう思いをしたことが、そういう思いをしなかった人に比べて、人生のどこかできっと役に立ってくる。私はそう思うんです。
もちろん、人生には経験しなくていいこともあるのかもしれません。でも経験してしまったことは変えられない。「必ずその経験が生きる日がくる」。そう信じて、少しだけ目線を上げて、周囲の景色を見てみる。そのことが明るい未来につながると思います。
◎竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
※AERA 2024年4月8日号