
大きな変革は起こせていない
そのうえで、ミュージカルに何度も足を運んでいる観客や目の肥えた関係者たちには、「作品のクオリティーがすごい、パフォーマンスもすごい」「セットもアイデアも規格外だ」と驚きをもたらせるような作品をつくりたい、と笑顔で語った。
自分の知名度や影響力は自覚している。そのうえで、日本のミュージカルシーンのため、観客のため、何ができるのかを考えたいという。どこか冷静で謙虚なのも個性なのだろう。
「『世界を変えてやる』という強い思いがあるわけではないですし、『自分の好みはこういうミュージカルです、いいじゃないですか?』という提案にすぎません。ミュージカルというコンテンツについて言えば、10年前に比べたらミュージカル映画も増えましたし、特集も組まれるようになりました。でも、城田優に何かできたか?と聞かれたらそこまで大きな変革は起こせていない」
何十年か後に「こんな功績を残したよね」
世の中の流れもシビアに見ている。「タイミングもあると思う」と言う。
「たとえば僕が密着番組で取材をされるような、何年も先まで立て続けにミュージカルのオファーが絶えない俳優だとします。そうした旬の時期に発言をしたら、多くの人に響くと思います。何かを変えたければ、そういう時期に発言をしないと意味がない。
何十年か後に『城田優も、こんな功績を残したよね』と言われるくらいになれたら。いまは、そんなふうに思っています」
「では、また5年後ぐらいに!」
別れ際、筆者とそう声をかけ合った。この人の5年後は想像できそうで、できない。だから、おもしろい。
(ライター・古谷ゆう子/文中敬称略)
