稀有なキャリアを辿る人だ。「エリザベート」「ピピン」「ファントム」、名だたるミュージカルで主要キャストとして舞台に立ちながら、昨今は演出家の役割も果たすようになった。190センチという長身によく通る声。繰り出される言葉はとても力強い。
【写真】取材中も気さくにカメラマンと話し、記者を気遣ってくれた城田優さん
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ビッグマウス貫き通す
「目指しているのは、すべてにおいてハイクオリティーなもの。演出、美術、照明、音響、パフォーマンスから制作にいたるまで」
「100パーセント、観たことのないものになっています!」
「ビッグマウス」なのだという。特に取材では、ビッグマウスを貫き通す。大きなことを言って自分を追い込み、そのレベルまで自分を引き上げるためだ。
「言葉にすれば、そのぶん責任が生じる。言ったからには頑張らなければ、と精神が引っ張られる状態にしておく。こんなことを言うのは、本当はダサいんですけれどね」
帰りの車の中で「あー、どうしよう」
「でも」と、少しはにかみながらこう付け加えた。
「取材が終わって、帰りの車のなかでは『あー、また大きなこと言ってしまった。どうしよう』とうなだれることもあります(笑)。ビッグマウスな人間がひ弱な姿を見せるわけにはいかないので、いまは頑張っていますけれど、家に帰れば呑気で、だらしないものです。あまり追い込まれすぎるとよくないので、近しい人には弱音も吐きますし、発散もします。バランスが難しいですけれど、『自分自身が壊れないこと』も大切なので」
さまざまな役割を担っているから、「できなかったらどうしよう」と公演前に不安になることはもちろんある。毎回アクロバットを披露した「ピピン」(2019年)では連日のように悪夢を見たし、本番前に恐怖で泣き続けたこともある。
「ずっとクールでなんていられるわけがない」そう話す姿は、とても人間らしい。