依存症やギャンブル依存について話してくれた精神科医の和田秀樹氏(本人提供)

 ドジャース大谷翔平選手の通訳、水原一平氏が違法賭博に関与した疑いで、現地時間20日(日本時間21日)、球団から解雇され、世界中に波紋が広がっている。水原氏自らが“ギャンブル依存”を告白した、という報道もある。

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依存症は"理性”を破壊する

「依存症は理性を“破壊”します。決して性格の問題ではなく、脳の回路に異常が起きる病気です」

 そう話すのは、精神科医の和田秀樹氏だ。

 依存症には「報酬系」という神経ネットワークと神経伝達物質である「ドーパミン」が関係している。人間は、脳内でドーパミンが分泌されることで報酬系が刺激され、ワクワク感や多幸感といった「快楽」を感じる。依存症とは、この報酬系が依存対象によって異常な興奮を起こし、脳が機能不全を起こした状態のことをいう。

「そうやって脳の回路が壊れてしまうと、あとで良いことがあるから我慢する、ということができなくなり、いま目の前にある快楽に飛びついてしまうようになります。水原氏がギャンブル依存だったとして、どこまで深刻な依存だったかはわかりませんが、極端に言えば、水原氏にとって大谷選手が“カネ”に見えていたときもあったのではないでしょうか」

食欲よりギャンブルを優先

 依存症患者は正常な判断ができなくなるので、「自身が持っているお金の多寡に関係なく、ギャンブルにお金をつぎ込む」と和田氏は言う。

「お金があればあるだけやりますし、なくてもやります。たとえば、生活保護を受けていたとしても、保護費を数日で溶かし、残りの期間は飲まず食わずで、なんとかしのぐ。次の保護費が入ったら、普通であればまず食べ物を買いますよね。でも、彼らはお金をまたギャンブルに使ってしまう。食欲という人間の本能よりも、ギャンブルで得る快楽を優先させてしまうわけです。依存症とはそういう病気です」

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唐澤俊介

唐澤俊介

1994年、群馬県生まれ。慶應義塾大学法学部卒。朝日新聞盛岡総局、「週刊朝日」を経て、「AERAdot.」編集部に。二児の父。仕事に育児にとせわしく過ごしています。政治、経済、IT(AIなど)、スポーツ、芸能など、雑多に取材しています。写真は妻が作ってくれたゴリラストラップ。

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