メガネの先には、映像が浮かび上がる
メガネの先には、映像が浮かび上がる
「CEATEC JAPAN 2015」で展示されたスマートツーリズムが体験できる機器
「CEATEC JAPAN 2015」で展示されたスマートツーリズムが体験できる機器

 アジア最大級の家電・情報技術の展示会「CEATEC JAPAN 2015」が10月7日、千葉市の幕張メッセで始まった。利益水増し問題に揺れる東芝をはじめ、ソニーや日立などの老舗家電メーカーの出展が見送られた。出展者数は531社・団体で、昨年に比べて16減少した。

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 家電の展示数が減る一方で、旅行会社の近畿日本ツーリストが初めて参加、観光や地域振興にIT技術を活用する取り組みを紹介している。

 同社のブースでは、「スマートグラス」という映像が浮かび上がるメガネをかけるだけで、観光地の様子を360度体験できる装置が展示された。メガネをかけると、辺り一面にCGの風景が広がった。周囲はだだっ広い砂地と晴れ渡った空……ところどころに大きな石が置かれている。日本古代のものと思われる服装をした人が、慌ただしく歩いている様子も見える。イヤホンから聞こえる解説によれば、奈良県明日香村にある「石舞台古墳」を建設している様子を3Dで再現したという。約1400年の時間をタイムトリップしたような体験ができる。

 また、メガネに浮かぶ映像は透けていることから、実際にメガネ越しで石舞台古墳を見ながら、3D映像の説明を受けられる実験を昨年2月に実施したという。

 近畿日本ツーリストは、こうした技術を取り入れた新しい観光を「スマートツーリズム」と呼んでいる。石舞台古墳のほかにも、江戸城天守閣跡(千代田区)や福岡城跡(福岡市)でも同様の取り組みを行っている。石垣の前でメガネをかけると、メガネ越しにかつて存在した建物を体感できるという。

「規模や知名度に関係なく、日本全国のあらゆる観光資源をVR(仮想現実)で活用していきたい。地域の振興にも貢献できれば」(同社広報)

 「未来型観光」が実現できる日は間近に迫っているようだ。

(ライター・河嶌太郎)