※写真はイメージ(撮影/写真映像部・上田泰世)

 年金受給者が住民税非課税世帯になるか否かの「211万円の壁」。税金や社会保険料年金を嫌って、そこに持っていこうとする人もいるだろう。だが、専門家は税負担が増えても年金額の手取りを増やすことが重要だという。AERA 2024年3月18日号より。

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 ファイナンシャル・プランナー(FP)の澤木明さんは、繰り下げで年金額が増える効果を強調する。

「税金や社会保険料は増えますが、手取りが増えることが大きいんです。例えば年間200万円の年金を見込める人が、受給を5年遅らせて70歳からもらい始めた場合、私の試算では、100歳まで生きると65歳からもらい始める人より可処分所得が1千万円も増えます」

 確かに「手取り」は重要だ。そこで「211万円の壁」と「繰り下げ」の効果を見るために表を作ってみた。年金収入(老齢基礎年金+老齢厚生年金)が年間で「180万~300万円」となる元男性会社員の世帯主(同じく年金生活者の被扶養配偶者と2人暮らし)を想定、各年金額での手取り額を試算した(編集部がある東京都中央区の場合)。

「211万円の壁」は確かに存在する。211万円と212万円の間では、国民健康保険と介護保険の保険料が大幅に上がるため、約6万円強の手取りの逆転現象が起きている。しかし、それも年金額が220万円になれば解消する。むろん自治体によって差はあるものの、年金210万円台の人が繰り上げをし、住民税非課税になるメリットが多いと言えるだろうか。

AERA 2024年3月18日号より

手取りアップに注目

 一方、「繰り下げ」の効果は、表を縦に使ってほしい。例えば、200万円の人の場合、240万円なら約2年半、260万円なら約3年半、280万円なら約5年、繰り下げた時とほぼ年金額は同じとみなせる。それぞれの手取りを比べれば生活が豊かになる度合いがわかる。

 ご覧のように、長く繰り下げるほど手取りは着実に増える。この人が約5年繰り下げると手取りで59万円アップ、何と月5万円ほど使えるお金が増えるのだ。税金と社会保険料が増えても、このアップ。そしてそれが累積すれば、先の澤木氏が言うメリットになる。

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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