ロシアでは3月17日に6年に1度の大統領選挙が行われる。立候補を認められたのは現職のプーチン大統領のほか、現体制を容認する「体制内野党」候補3人だけという翼賛選挙で、プーチン氏の通算5選は揺るがない状況だ。同時に、国内でのプーチン人気は決して低くない面もあるという。前出の下斗米さんはこう解説する。
「独立系機関による世論調査では、プーチン氏の支持率は8割程度を維持しています。開戦以来、大都市圏からは100万人程度の人がロシアから逃れたと言われていますが、軍需産業も戦況も一応は好調で、国内に残っている人の多くはプーチンの統治に疑問を持ちづらい状況です。ロシア人はよく、『川の中で馬を乗り換えるな』と言うように、直近でロシアの国内情勢が大きく混乱するような事態はあまり想定できません」
西側は手詰まり感
一方、2年以上続くウクライナ戦争では、変化の兆しが強くなってきている。昨年6月からのウクライナ軍の反転攻勢が事実上敗北に終わり、少しずつロシア優位が報じられるようになってきた。外交関係でも、1月にスイスで開かれた和平協議では新興国の反対で議長声明が見送られるなど、国際社会が反ロシアで一致できない状況が続く。下斗米さんは続ける。
「軍事でも外交でも、ゼレンスキーを支持してきた西側・NATOの手詰まり感が濃くなっています。ウクライナ国内では3月末に大統領選挙が予定されていましたが、戒厳令の延長で選挙の延期も決まりました。ゼレンスキー大統領の任期は5月20日までなので、そのときの戦況いかんによっては権力の正当性が揺らぎかねません。ウクライナやウクライナを支援する西側にとっても土壇場で、和平への岐路に立っていると言えるでしょう」
ナワリヌイ氏は亡命の機会がありながらも、「故郷はロシアただ一つ」として、ロシア国内で活動を続けた。彼が望んだ民主的なロシア、妻、ユリア氏が言う「美しい未来」が訪れるのはいつになるのだろうか。(編集部・川口穣)
※AERA 2024年3月18日号