音楽を離れ、セカンドライフへ
それなら音楽の先生になろうと思って、音大には入りました。でも教員免許をとるために教育実習に行ったら、リコーダーを吹いて、次はボレロのビデオを見て……みたいに、学習指導要領で決められた範囲のことしか教えられない現実に直面して。
元から分かっていたことではあるんですけど、自分としては、音楽ってこういう構成になってて、こんな面白い理論とか仕掛けがあって、っていう楽しさを伝えたいと思っていたので、自分の理想とは違うなと肌で感じました。
それで、もうこれからはセカンドライフを歩もうと思って、音楽とは全然関係ないIT企業に就職しました。
――そこからどうやって、ポップスピアニスト・ハラミちゃんが誕生したのでしょうか?
就職後、仕事を頑張りすぎた結果、心と体に限界が来てしまい、休職することになりました。
そんなある日、仲の良かった会社の先輩が、「都庁に置いてあるストリートピアノを弾きに行かない?」って誘って下さったんですね。ピアノに触れるのは数年ぶりだったんですけど、RADWIMPSの「前前前世」を弾いたら、演奏を聴いていた方から「よかったわよ」って言ってもらえて。
その時、小学校時代の休み時間によく友だちの前でピアノを弾いていたことを思い出しました。普段の練習で弾くのはクラシックだけど、学校ではアニメソングとかJ-POPの曲を弾いて、みんなから「よかったー」とか「次はこれ弾いて!」って言ってもらえるのがすごくうれしかったなと。
それで、ああやっぱり自分は、ピアノを通して人とつながる時間が幸せなんだって再確認しました。もちろんピアノ自体も大好きだけど、一人でそっと自分のために弾くよりも、誰かと目が合ったり、リクエストをもらって弾き返したり、ピアノでコミュニケーションをとることが好きなんだな、と。