クラシックは「時代に逆行」
――クラシックがより多くの人に親しまれるためには、何が必要だと思いますか?
クラシックを無理にキャッチーな存在に落とし込む必要はないと思うんですけど、正直、今の時代には逆行していますよね。映画もドラマも短い作品が増えて、TikTokなんてもはや15秒で、音楽も2分くらいの曲が珍しくなくなっているのに、クラシックってすごく長い曲が多いんですよ。
でも、今流行りの"推し"の切り口で考えるのも、面白いなと感じています。
推すって、作品や技術だけじゃなくて、その人自身の顔だったり性格だったり発言だったり、全部込みで好きになってはじめて推すわけじゃないですか。クラシックも一緒で、作曲家の思いとか、なんでこの曲を作ったのかっていう背景を考察しながら聴くと、全然ちがって聴こえてくる。
たとえば、すごく明るい曲なのに、実はその作曲家が病気でつらいときに書いた曲だったっていうことを知ったら、彼は恋人との今後を想像して書いたのか、それとも誰かに贈った曲なのか、なんて想像しながら聴けるので一気に楽しくなりますよね。私はポップスの曲でも、いつどんなときに作られたのかを調べて、その作曲家さんの状態や気持ちを想像しながら弾くようにしています。
クラシックは、もっと音楽家の人となりを気軽に知ることができるきっかけがあったらいいなと思います。映画の「アマデウス」が公開されたときは、モーツァルトのファンになった人やクラシックを聴くようになった人が増えたでしょうし。