マザーハウス アパレル事業部 生産・開発グループ インド担当リーダー 後藤洋美(ごとう・ひろみ)/1986年、岐阜県生まれ。上田安子服飾専門学校卒業。2016年に入社し、店舗スタッフとして勤務。18年、インドのコルカタ工房に駐在。現在、ブランド「ERIKO YAMAGUCHI」を担当(撮影/写真映像部・高野楓菜)

 全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2024年3月18日号にはアパレル事業部 生産・開発グループ インド担当リーダー 後藤洋美さんが登場した。

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“平面を立体にする仕事”

 高校時代、パタンナーという職業の説明文を見た時に、「めちゃめちゃかっこいい」と衝撃を受けた。元々、裁縫は得意だったが、仕事として目指し始めた。専門学校卒業後に夢をかなえたが、ワンシーズンで捨てられる衣類を作り続ける日々に疑問を抱いた。離職し、青年海外協力隊で服飾の先生としてタンザニアへ。滞在した2年間で、その国の人が好きになった。

 次の仕事場にマザーハウスを選んだ。効率重視のライン生産でなく、やりがい重視の「テーブル生産」方式にひかれたからだ。テーブル生産とは、分担作業ではなく、5〜6人が一つのテーブルで全ての工程を担当する生産方式だ。

 入社当時、生産・販売はかばんのみだったため、服飾のパタンナー職自体がないことは承知していた。だが、転機が訪れる。2018年、アパレル事業の立ち上げの際、白羽の矢が立ったのだ。

「趣味で続けるつもりだったパタンナーを再び仕事でできることになり、幸せでした」

 インド東部コルカタに新設された工房への駐在も、快諾。現地語は話せなかったが、コミュニケーションは取ることができた。

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