「パタンナーの仕事は、技術を見せたり、図解を使ったりと、言葉以外の伝達手段が多くあります。今でも日本語、英語、ベンガル語をミックスした言葉と、身ぶり手ぶり、表情で会話しています」

 コロナを機に帰国した今も、日本とインドを行き来しながら、40人ほどの現地スタッフとは、家族と思えるほど、信頼関係を築けているそう。

「私の特技は、世界中どこに行っても『家族』を作れること。その秘訣は、やっぱり笑顔と愛嬌ですかね」と笑う。その一方で品質には厳しく、検品時はささいなほつれも見逃さない。「検品チームからは厳しすぎると言われることもありますが、そこは譲れません。お客様を少しでも不安にさせたくないという、自分の思いも伝えています」

 パタンナーとは、仕事のパートナーであるデザイナーのデザインを、忠実に再現できること。その目標に、近づいている手応えがある。

 現在、コルカタの工房で若手の男性パタンナーの育成にも携わっている。近い将来、来日経験がない彼を、日本に招きたいと思っている。(フリーランス記者・小野ヒデコ)

AERA 2024年3月18日号