一般参賀は象徴天皇を体現する行事である一方で、戦前から天皇が持っていた「権威的なもの」を引き継いでいる感じも受けると河西准教授は言う(撮影/松永卓也)

「天皇や皇室に権威的なものを求める人たちには『(彼らは)公に尽くさなければならない』という感覚がすごく強い。いまの上皇ご夫妻が平成の時代に頻繁に被災地を訪れ、公に尽くす姿を見て、天皇や皇室が好きになったという人たちもいる。そういう人たちから見ると、眞子さん結婚の件などは金銭トラブルも含め『私』の部分が見えすぎてしまい、『裏切られた』という思いも強かったのでは」

 一般参賀に1万5千人が集まる光景と、皇室への誹謗(ひぼう)中傷がやまない現実と。「両極」とも言える状況を、どう考えればいいのか。河西さんは「勝ち組」「負け組」で分断されるいまの社会状況も影響していると見る。

この日は小雨が降る中、参入門である皇居正門(二重橋)付近には開門前から長蛇の列。記帳を合わせて約1万5千人が天皇の誕生日を祝った(撮影/松永卓也)

会見での印象的な発言

雅子さま病気療養で十分に公務ができなかった頃、皇太子の退位をうながす『廃太子論』も出るほどだった現天皇に比べ、眞子さん、佳子さまに続いて皇位継承権のある男の子(悠仁さま)も生まれ、『順調』だった秋篠宮家は、『平成の勝ち組』に映ったかもしれません。『うまくいっている方の人』を、いっていない人たちが何かのきっかけで徹底的に袋だたきにし、鬱憤(うっぷん)を晴らす。そんな風潮が『両極の状況』の背景にあるのではないかと思います」

 天皇は2月21日に記者会見も行った。河西さんは印象的なシーンがあったという。

「悠仁さまについて質問を受け、『少しずつ、皇室の一員としての務めを果たしてくれていることを頼もしく思っています』などときちんと言及されたことです。天皇家と秋篠宮家の間に分断があるかのような見られ方に対して相当に配慮された、という印象を受けました。このままでは国民統合の象徴たり得なくなる。そんな危機感さえお持ちではないかと想像します」

自分事として想像する

 いま皇室は皇位継承のあり方や皇族数の減少、皇族の人権についてなど課題が山積だ。河西さんは、天皇と皇室に任せっきりではなく国民一人ひとりが危機感を持ち、考えるべきと話す。

「たとえば、現在の皇室典範の規定では女性皇族は結婚したら皇族ではなくなります。議論が進まないと、愛子さまや佳子さまなど女性皇族にとってはこの先の生き方も定まらず、言わば宙ぶらりんの状態。そんな環境に置かれている人たちのことを、自分事として想像してみる。皇族が職業選択や居住の自由がないのはいまの制度上、仕方ない部分もある。でも今の日本社会でそんな状況に生まれながらに置かれた人たちがいることを認識し、『仕方ない部分』をどれだけ自分たちの方に近づけ、『人間としての自由と、象徴天皇制のバランス』をとっていくかを真剣に考えてみる。そこから始めるべきではないでしょうか」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2024年3月18日号

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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