「綿密に線量分布を設定しても、照射時にずれてしまえば、高精度照射のメリットを生かしきることができないですからね。近年は画像診断装置を搭載した『MRリニアック』という治療装置も登場し、治療計画自体を毎回の治療ごとにおこなえるようになり、さらに精度が上がっています。今後、導入する病院が増えていくのではないでしょうか」(同)
通常の外部照射は主にX線という放射線が使用されているが、「粒子線(陽子線・重粒子線)」を使う治療も普及しつつある。
X線はからだの表面に最も強くあたり、そこから減弱していくのに対し、粒子線は病巣まで進んでから一気にエネルギーを放出し、そこでほぼ止まる性質がある。そのため、病巣の手前や奥側の正常組織にはほとんどあたることはなく、合併症を少なくできる。また、骨軟部腫瘍のように「X線は効きにくいが、粒子線は効くがん」もある。
すでに保険適用されていた骨軟部腫瘍、前立腺がん、頭頸(とうけい)部がん、小児がんに加え、22年4月から「4センチ以上の肝細胞がん」「肝内胆管がん」「局所進行膵がん」「大腸がんの術後再発」「子宮頸部腺がん」も保険診療が認められるようになり、治療を受けやすくなった。現在、25施設(重粒子線6、陽子線18、両方1)で実施されている。
手術不可能な進行がんを放射線で治療できることも
外部照射はさまざまながんを治療できるが、「内部照射」は、線源を病巣近くに置くことが可能な前立腺がんや子宮頸がん、頭頸部がんなど、限られた部位のがんが対象だ。
中でも子宮頸がんに対しておこなわれる「外部照射と腔内照射を組み合わせた治療」は、根治のための欠かせない手段になっている。早期でも選択肢の一つだが、手術ができないⅢ期以降、根治をめざせるのは放射線治療のみ。抗がん剤を組み合わせれば、ⅣA期(遠隔転移はないものの直腸や膀胱の粘膜にがんが広がった状態)まで治療することができる。
「最近は、腔内照射でも外部照射のようにCTやMRI画像を用いて位置を合わせる『画像誘導小線源治療』もおこなわれています。より大きながんも治療できるようになり、治療成績も向上しています」(同)