コンテンポラリーの名盤第2回目は、いかにもコンテンポラリーらしい明るく軽快な作品をご紹介しよう。アメリカのジャズ雑誌人気投票の各部門1位を集めた『ポール・ウィナーズ』は、ギター部門のバーニー・ケッセルにベース部門のレイ・ブラウン、そしてドラムス部門の第1位となったシェリー・マンの3人が共演した、たいへん親しみやすいアルバム。デューク・ジョーダン作の名曲《ジョー・ドゥ》の、もっとも優れたギター・バージョンが収録されている。
そのシェリー・マンの傑作として知られているのが、映画『マイ・フェア・レディ』をテーマにした同タイトルのアルバム。内容はクラシック畑でも活躍したピアニスト、アンドレ・プレヴィンを起用したピアノ・トリオ作品で、いかにもウェスト・コーストらしい明るいピアノ演奏が素晴らしい。
しりとりではないけれど、そのプレヴィン名義のアルバム『キング・サイズ』もまた聴き応えのあるピアノ・トリオ作品。軽やかなピアノのノリが心地よい。タイトルをもじったライオンのイラストもなかなか愛嬌がある。ピアノ・トリオ作品というくくりでは、超絶技巧で知られたフィニアス・ニューボーンJr.の『ア・ワールド・オブ・ピアノ』も快適なドライヴ感のあるピアノが魅力的だ。
そしていかにもコンテンポラリーらしい作品が、後にクリント・イーストウッド監督の『バード』など映画音楽で大活躍するアルト奏者、レニー・ニーハウスの『ザ・クインテッツ』。ジャック・モントローズのテナーにボブ・ゴードンのバリトンを従えた、典型的白人ウェスト・コースト・ジャズ・サウンドが聴きどころ。
そして渋めのベーシスト、カーティス・カウンスのリーダー作『ランド・スライド』が意外に面白い。ジャック・シェルドンのトランペットにハロルド・ランドのテナーによる2管クインテットから生み出されるサウンドは、まさに西のハード・バップと言っていいだろう。
コンテンポラリーは70年代以降もかなり優れた作品を出している。レイ・ブラウンの『サムシン・フォー・レスター』は、シダー・ウォルトンのピアノにエルヴィン・ジョーンズのドラムスという異色のピアノ・トリオで、発売当時かなり話題となった。同じくピアノ・トリオ作品の『ファントム・オブ・ザ・シティ』は、ジョージ・ケイブルスの隠れ名盤。哀愁を帯びた味わいが聴きどころ。
そしてチコ・フリーマンがウィントン・マルサリスをサイドに従えた『デスティニーズ・ダンス』にはボビー・ハッチャーソンが参加しており、まるで60年代新主流派の80年代バージョンの様。かなりの力作だ。変わった所では、ピーター・アースキンの『ピーター・アースキン』が面白い。あまり知られていないが、ブレッカー・ブラザースをサイドに従え、それにマイク・マイニエルまで加わっていながら、まったくフュージョン風ではないストレート・アヘッドな演奏が聴ける。アースキンのドラム・ソロも収録されているが、これがシンプルながらなかなか気持ちが良い。[次回10/19(月)更新予定]