IQ70以上85未満の「境界知能」の子どもたちのために認知機能強化トレーニング「コグトレ」を考案、『ケーキの切れない非行少年たち』の著者でもある児童精神科医で医学博士の宮口幸治先生。花まる学習会代表・高濱正伸先生との対談を、子育て情報誌「AERA with Kids 2023年冬号」(朝日新聞出版)からお届けします。※前編<IQ70以上85未満の「境界知能」を持つ子が生きづらい理由とは 『ケーキの切れない非行少年たち』の著者に聞く>から続く

MENU わが子が「境界知能かもしれない」と思ったら 自分の居場所と自己肯定感 それがあって初めて学力が構築される

わが子が「境界知能かもしれない」と思ったら

高濱:うちの子が境界知能かもしれないと思ったら、どうすればいいのでしょう。

宮口:まずは知能検査です。発達相談の窓口に相談して検査を受けるのが第一歩。親の気持ちで判断せず、専門家に相談にのってもらうのが、支援の始まりです。

高濱:なるほど。早く検査して正しく支援してもらうことで、対応を誤るリスクも低くなるし、将来の可能性も広がるんですね。

宮口:はい。IQは一生変わらないものではなく、環境によって変化することも少なくありません。境界知能に関しては専門家でもまだまだわからないことが多いです。ただ、少しでも早めに対処して、基礎的なトレーニングをしたほうがいいでしょう。

高濱:そのままだとコンプレックスや生きづらさのかたまりになってしまうものを、できるだけ早く見つけてトレーニングすれば、それが自信に変わる。先生が考案された「コグトレ」ですね。

宮口:コグトレは認知機能に着目したトレーニングの略で、医療少年院で少年たちの持つ弱いところを何とかしてあげたいという思いのもと、5年かけて開発されました。生きるために必要な認知機能の五つの要素を鍛えるべく考えられました。

高濱:素晴らしいです! 少年院での更生トレーニングとしてだけでなく、教育界全体にも影響を与えると思います。

宮口:問題はシンプルですが、学習の土台となる力がつけられるよう考えられています。点をつないで見本の絵を同じようにうつす、与えられた情報から目に見えないものを想像する……などなど。今は、小学校の朝の会で5分で取り入れているところも多いんですよ。

次のページへ学力の土台となるものは?
著者 開く閉じる
篠原麻子
篠原麻子
1 2 3