高濱:コグトレは、うちの「なぞぺー」にすごく似ています。勉強がすすむと、多くの子どもたちがある種の知的な壁にぶちあたります。10歳くらいが多いんですが。そのときに、たんに正解を教えるのではなく「どこで困っているか」に気づいて引き上げてあげる。これはどんな子にも通じる話ですね。

宮口:そうですね。コグトレもつまずきがちな箇所を可視化できるようになっています。境界知能の子は自分でもよくわからないままじわじわと傷ついている。傷つく気持ちにIQの高低はありません。だから、かわいそうという気持ちで接してはダメで、一人の人間として尊重すると心を開いてくれます。 

自分の居場所と自己肯定感 それがあって初めて学力が構築される

高濱:わかります! 子どもに一番大切なのは自己肯定感ですよね。

宮口:少年院の少年たちは自己肯定感が低い子が多く、投げやりだったり、妙に素直だったりしますが、接しているうちにガラリと変わる瞬間があることを目の当たりにしてきました。いくつかあるのですが、勉強がわかるようになったとき、大切な役割を任されたとき、信用できる人に会ったとき、集団生活の中で自分の姿に気づいたとき、などがあげられます。これらに共通するのは「自己への気づき」と「自己評価の向上」。自己肯定感が生まれると、その子は変わり、生き生きとしてきます。

高濱:ものすごく共感します。僕はこれまで学力には二つある、ひとつは読み書き計算という認知能力をベースとした基礎的な学力、もうひとつが、そのうえで思考力などの非認知能力を磨いて自分の得意なことを伸ばしていく学力、と言ってきたのですが、その一番下に、自己肯定感と、ここにいていいんだという自分の居場所、生きるための基盤がなくてはいけない。これは、学びだけでなく、生きていくうえでの大原則です。今日の対談でその思いをさらに強くしました。

学力は、読み書き計算のような基本の力を土台として身につけたうえで、個々の興味と得意分野に応じた思考力をつけることが大切だが、土台の下の基盤というべきものに、愛情に培われた自己肯定感がなくてはいけない。(高濱先生のお話をもとに編集部で作成)

宮口:少年たちも、自己評価が上がると勉強を熱心にするようになって考える力もついてくる。すると、自分のことを表現することもできるようになるんです。

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