なにより、毎回、オリジナル楽曲が準備され、それを実際にミュージカルに出演しているプロフェッショナルの俳優たちが歌い踊るという手間ひまをかけたものには見応えがある。
7:どこに転がっていくかわからないオリジナルストーリー
史実に基づいたものでも、原作ものでもないので、ネタバレの心配がない。単なる現代批評でも回顧ものでも、タイプスリップコメディでもなく、どこに向かうのか続きがとても気になる。
8:意外と真面目
真面目だなあと思ったのは、1986年に放送されているちょいエロな番組の観覧に参加したサカエが、露出の派手なタレントを見ながら、「なぜ自分がここに呼ばれどう振る舞うべきかちゃんと心得ている。求められる役目を誇りをもって果たしている」とつぶやく第3話。さらにその番組にMCとして出演しているエッチな医者ズッキー(ロバート秋山)がカメラの回っていないところでは医者として適切な処置をする。
80年代のテレビドラマは、ガワだけ見たら、エロバカの不適切極まりないものに見えて、演者たちは「求められる役目を誇りをもって果たして」いたのではないか。エロや毒をきちんと芸に昇華していたのが、いまや、芸と素を見極めるものさしがなくなり、なんでもかんでもNGになってしまう。これでいいのか。
これからどんな「新展開」があるか
ただ、2024年にも希望がある。飛行機だったらビジネスではなくエコノミークラスランクとされている俳優・八嶋智人がふいに1時間の情報番組のMCを任されたとき、しっかりやり切る。大河や歌舞伎にしれっと潜り込むと自虐的なことを言うが、1時間番組を仕切る能力は並大抵のことではない。
そんな彼が仕事を受ける理由は、自分の所属する劇団カムカムミニキーナの公演の告知なのだ。たった30秒、公演の告知をするために、すべてを懸ける。そういう俳優も令和にまだいるのである。
このまま、過去と未来の行き来、なつかしいアイテムや不適切言動あるある、ミュージカルなどをパターン化しただけではなく、きっと新展開があるはず。なにしろ、1986年から2024年までの間にはいろんな未曾有な出来事が待ち構えているからだ。それをどう描くのか、描かないのか。もしかしたら、震災も含めて昭和から平成における日本を描ききった「あまちゃん」を超える名作が誕生する可能性もある。
(木俣冬 : コラムニスト)