春風亭一之輔・落語家
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 落語家・春風亭一之輔さんが連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今回のお題は「インフルエンザ」。

 受験生の息子がいる。「インフルエンザ」と口にしたり、インフルエンザのことを考えたりしただけで感染しそうな気がするので今回のお題は精神衛生上非常によくない。あと数週間、気をつけていかねばな! ということで、以上、「インフルエンザ」終了!

 ダメ? ダメか? ……ダメだよなー。

 私、2022年にコロナには一度罹りましたが、インフルエンザはとんとご無沙汰です。前にインフルエンザになったのは今から26年前、1998年2月のはず。

 その時の発熱、頭痛、悪寒、身体の節々の痛みなどなど、猛烈な記憶がある。私が罹る前に、その当時付き合っていた彼女がインフルエンザになった。ともに二十歳で、まだ付き合い始めて2カ月弱のころだ。

 その日は彼女の家のテレビで長野五輪の開会式の中継を観ていた。当時の横綱・曙が土俵入りしたり、なんやかんやあってクライマックスは聖火台への点火だ。女子フィギュアスケートの第一人者だった伊藤みどりさんが最終ランナー。トーチを掲げた伊藤みどり(以下、敬称略)はまるで卑弥呼のような装束を身にまとい聖火台の階段を上る。おー。祭主感凄い! そして点火! 沸き起こる拍手と歓声! そして少しの笑い! ビバ、サマランチっ!

 最初は楽しく観ていた彼女だったが、だんだんと顔色が悪くなってきた。しばらくするとガタガタ震え出し「身体が痛い」と言う。熱を測ったら40℃オーバーだと。みどりの聖火が飛び火したかのようだ。決して伊藤・シャーマン・みどりのせいではないのだが、なかなかのタイミングで驚いた。

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「あー、と、友だちっす」