フロッピーディスクと、データを読み取るディスクドライブ=米倉昭仁撮影

 コンピューターやインターネットのセキュリティー事情に詳しいトレンドマイクロ(本社・新宿区)によると、病院や工場などではインターネットと切り離した独自のネットワークを構築することが一般的で、インターネットを通じてデータを送るより、FDで受け渡しをしたほうがデータ漏洩のリスクが低いという。

「たとえFDを紛失しても、読み取り装置がないと中身を見ることはできませんから」

 と、トレンドマイクロの担当者は説明する。

 さらに、USBメモリーにコンピューターウイルスを潜ませてパソコンに感染させ、データを盗むケースはあるが、「FDでの事例はほぼない」と言う。

「ウイルスというのは広く感染させることが目的なので、使われている環境がかなり限定されているFDは、攻撃者が使おうという気になりません。なので、FDが攻撃の手段として用いられる可能性はかなり低い」(トレンドマイクロの担当者)

 そもそもFDの容量が小さいため、データが大きなウイルスがそもそも入らない、という理由もあると見る。
 

今でも「新品」の発見が

 FDは、パソコン以外にも工作機械、印刷機、工業用ミシン、測定器、エレクトーンなどの楽器と、さまざまな機器で使われてきた。

 アパレル業界で使用されている業務用刺しゅうミシンもその一つ。作業服への会社ロゴなどの刺しゅうを約20年にわたって手掛けてきた東海地方の業者によると、パソコンで作成した名前やロゴマークなどのデータを、FDを使って刺しゅう機に移す古い製品を愛用する業者が少なくないという。

一部の業者で使われているフロッピーディスク=刺しゅう業者提供

 この企業の女性社長は、

「うちもそうですが、昔からあるマニアックな業者ほど、FD時代の刺しゅう機が好きですね。新しい刺しゅう機が出るたびにメーカーから買い替えを勧められますが、それほど稼いでいないので(笑)」

 と話す。
 

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古い機器の「安定性」