認知症を発症した親に、どのように接すればいいか悩む家族も多いようです。「認知症の介護は身内には無理。でもその場その場で対応のしかたがある」と介護アドバイザーの髙口光子さんは言います。その時々でどうすればよいか、介護のプロの技術を聞いてみました。
【図版】「加齢による物忘れ」と「認知症による物忘れ」の違いは? 検査で異常がなくても認知症になるリスク
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親の困った行動には、常識的に対応する
認知症を発症して、簡単なことが徐々にできなくなっていく親を見ているのは、本当につらく、せつないことです。
「なんとか認知症を予防したい、それでも認知症になったら、治したい、できることなら進行を遅らせたい」と多くの家族が思っています。弱っていく親に「しっかりしてほしい」という感情をコントロールできないあなたは、たとえば、母親が何十年と繰り返してきたみそ汁がつくれなくなって、自分でも戸惑っている状況を前にして、「何やってんの!」と叱りつけてしまいます。「まずい。いつもの味じゃない」「台所をちらかして汚い」など、言葉が止まらなくなってしまいます。
そして、自分の強い態度や言葉に後悔を繰り返し、ますますつらくなります。そんなとき、「普通の接し方をする」ことを心がけてみてください。
目の前でまごまごして困っている人が他人だったら、あなたはどうするでしょうか。そんな言葉は投げつけられないはずです。認知症だから特別な接し方をするというのではなく、普通の、常識的なかかわり方をすればいいのです。さりげなく手伝って、一緒にみそ汁をつくり、一緒に食べ、あとで本人に気づかれないようにさりげなく片づけてあげる、それでいいのです。
認知症の親ができないことを非難するのは「いじめ」
認知症では知的な機能が障害され、記憶、見当識(いまが何月何日で何時か、いまいる場所はどこかなど)、思考、判断などがこれまでと同じようにはできなくなっていきます。
そういう人に向かって、「つくり方、忘れたの?」「きれいに片づけられないの?」などと言うのは、たとえば(引き合いに出して申し訳ないのですが)、視力が低下した人に「赤信号でしょ、何回言ったらわかるの?」と言うようなものです。