昨日(9月1日)は「防災の日」でしたね。
この機会に、家具の転倒防止や食器類の落下防止など、家の中の地震対策をチェックした人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、建物の震災対策の基本となる「耐震」「制震」「免震」にフォーカスしてみました。
この3つの違い、皆さんは説明できますか?

「地震大国」といわれる日本で、ビルやマイホームの震災対策は必須
「地震大国」といわれる日本で、ビルやマイホームの震災対策は必須

地震から建物を守る代表的な3つの構造

一般的な建築物の構造形式には、「耐震構造」「制震構造」「免震構造」の3つがあります。
では、「耐震」「制震」「免震」の違い・特徴とは何なのでしょうか?
【耐震構造】
耐震とは、頑丈な柱・梁(はり)・筋交いなどで建物をガッチリ固めて、揺れに耐える強度を得る方法です。阪神大震災でも一定の効果が認められたベーシックな構造ですが、地震のエネルギー(振動)が建物に直接伝わるため、建物自体の揺れや損傷、建物内の被害(家具の倒壊など)も大きくなりやすくなります。
比較的、簡易・低コストで施工できるので、現在も多くのビルや戸建て住宅で採用されており、建築基準法が示す「最低限の基準」も耐震の考え方が基本となっています。
【制震構造】
制震とは、構造体にダンパーなどの可動装置を設置し、揺れによる建物のダメージを抑える方法です。制振部材が揺れに追従して地震のエネルギーを吸収・消費するため、揺れの大幅な低減はありませんが、建物自体の変形・損傷は比較的少なくなります。
【免震構造】
免震とは、建物の土台と地盤の間に積層ゴムなどの免震装置を設置して、地盤の揺れを建物に伝えにくくする方法です。建物が地盤の揺れに対して反作用で移動する(揺れに共振しない)ため、建物自体の揺れや変形・損傷、建物内の被害も大幅に低減します。

東日本大震災をきっかけに導入が進む高層ビルの「制震・免震」

骨組みの強さや粘りで揺れを受け止める「耐震」。
構造体のブレーキ装置で揺れを吸収する「制震」。
基礎の装置で地盤からの揺れ自体を軽減する「免震」。
これら3つの構造がどれほどの効果を発揮するかは、地震の規模や震源からの距離、建物の規模や地盤など、さまざまな要因がかかわってくるため一概には言えません。
コスト面を含め、それぞれにメリット・デメリットがありますが、首都直下型地震など巨大地震への備えとして、近年注目されているのが高層ビルの「制震・免震」です。
2011年に起きた東日本大震災では、東京都心の高層ビルやタワーマンションの上層部がゆっくりと大きく揺れる「長周期震動」が観測され、その対策として制震・免震の技術導入が進められています。
1974年に竣工した耐震構造の「新宿三井ビルディング」(高さ約210メートル)では、長周期震動への対策として今年5月、屋上に巨大な振り子式の制振装置を設置。重さ1800トンの振り子の錘(おもり)が、揺れの方向と逆に振れることで、長周期震動の揺れ幅と揺れ時間を大幅に軽減できるといいます。
さらに、制震と免震を組み合わせたハイブリッド構造のタワーマンション建設や、センサーが即時に地震を感知し、コンピューター制御で揺れと反対方向に建物を動かす「アクティブ免震システム」の研究・開発も進んでいるそうです。
いつ・どこで起こるかわからない巨大地震。
その被害やリスクを可能な限り軽減し、私たちの暮らしを見守ってくれる建築技術の進化に、今後も大きな期待を寄せたいと思います。

高層ビル&マンションが立ち並ぶ東京の風景
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