同じドレスでも皇太子妃時代はアクセサリーで清楚でかつフレッシュな気品、時を経て59歳の雅子さまは同じドレスに一連パールを合わせられ知的な品格が感じられた。歌会始の儀のドレスも同様である。青木氏はそのドレスをこう解説する。
「歌会始めの儀のドレスは、とても凝ったものです。オフホワイトの唐草模様がレース状に表されています。写真で拝見する限りですが、おそらく、レースの上にごく薄いシルクのオーガンジーを合わせたような布で作られたものではないでしょうか。シルクはその動きに合わせて『衣擦れ(きぬずれ)』というかすかな音を立てます。雅子さまが歩かれる気配が、伝わってきそうです。また、胸元にはV字型に、レースが重ねられており、そこに小さなビジューの装飾があります。雅子さまが動かれると、それらの装飾がキラキラと胸元で光って、お顔を明るく照らします。間近では、神々しさをも感じることができるかもしれません。トゥポウ6世の戴冠式という格式のある行事に相応しいドレスといえるでしょう。戴冠式では勲章を佩用(はいよう)されていました。その時勲章の綬(じゅ)を胸元で留めていらしたブローチと大変よく似たものを、今回は、襟の中心になさっています。アクセサリーはシンプルですが、まさに新年の4つの行事の締めくくりに相応しい、シンプルでありながら格の高い装いだといえるでしょう」(青木氏)
着回しという言葉のはるか上をいく、こうも同じドレスが輝いて見える着こなしへの工夫だったとは――。アクセサリーなどの装飾品のあしらい以上に、雅子さまのたたずまいや存在そのものが何度同じドレスを着ても素敵に映すのだろう。
(AERA dot.編集部・太田裕子)