大宮:じゃあ、睡眠がたっぷり取れていれば、小説を邪魔するものは、あんまりないですか。
小川:小説を邪魔するのは、ほかの小説ですよね。
大宮:え、どういう意味ですか?
小川:多くの作家って、同時に何本か企画をやってたりするんで。この小説についてじっくり考えたいけど、別の原稿の締め切りが近づいているから先にそっちをやらなきゃいけないとか、そういうのが多いですかね。
大宮:何本ぐらい抱えてるんですか。
小川:僕は同時にやるのがとんでもなくストレスなんでなるべく少なくしているんですけど、三つぐらいは。
大宮:えー。そんな、三つも同時に考えられなくないですか?
小川:同時に書くわけじゃなくて、ある程度、今週はこの作品、今週はこの作品っていう感じです。それでもやっぱり1週間たつとね、前の作品のことを結構忘れちゃうし、1回ごとに脳をリセットしなきゃいけないんで、ストレスは大きいですよね。
大宮:小説より好きなことは?
小川:寝るのが一番。
大宮:締め切りがなくなったら、これやっちゃいそう、みたいなのは?
小川:ほかの小説を読んだりとか、海外ドラマとか、映画を見たりとか、あとテレビゲームとか、スポーツ観戦も好きなんで、やりたいことは、いくらでもありますよね。
大宮:誘惑はたくさんありますね。
小川:でも、小説を書いて、それを本にするっていうプロセスでしか味わえない楽しさっていうのは、やっぱりあるんで。だから、締め切りがなくなったり、あるいは僕がすごいお金持ちになったりとかしても、小説を書いてるんじゃないかな。
※AERA 2024年2月12日号