大宮エリーさんと小川哲さん[写真:本人提供(大宮さん)、写真映像部・高野楓菜(小川さん)]

 作家・画家の大宮エリーさんの連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんぼのもんかと考えます。20人目のゲストは直木賞作家の小川哲さんです。

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大宮:この連載では東大つながりでいろんなジャンルの方にお会いしてるんですけど、作家さんは小川さんが初めてなんです。作家の生活がどういう感じか全然分からなくて……。結構、飲みに行ったりするんですか。

小川:いや、そんなに頻繁には。小説家の「忙しい」って難しくて。サラリーマンだと会社から帰るのが遅かったり、土日に出勤しなきゃいけなかったりとか、そういう忙しさじゃないですか。でも小説家って、肉体的に拘束されてるわけじゃないんで、「あした飲みに行こう」とか「あしたの昼、ディズニーランド行こう」とか言われても、物理的に行けることがほとんどだとは思うんですよね。

大宮:はい。

小川:だけど、例えば2週間後までに小説を上げなきゃいけないけど、構想がまだ決まってないから、遊びに行っても仕事のことを考えちゃうので行けないとか、そういう状態を“忙しい”と定義するかどうかって、難しい問題ですよね。

大宮:朝型ですか、夜型ですか?

小川:僕はランダムというか、打ち合わせや取材がなければ、寝たいだけ寝て、起きて、仕事して、また寝たいだけ寝るっていう生活なんで、生活リズムは、結構ズレることが多いですね。今は、比較的、朝早く起きてるんですけど。

大宮:ミュージシャンっぽい(笑)。

小川:小説を書くっていう作業って、睡眠不足でできる工程が1個もないんですよね。

大宮:うんうん。

小川:取材を受けたりとか、ゲラを直したりとか、メールを返したりとかは睡眠不足でもできるんですけど、小説を執筆するときは、頭がフルに動く状況じゃないと、なかなか詰め切れない。だから、僕の場合は、眠いっていう状態にならないようにすると、結構生活リズムがバラバラになっちゃうんですね。

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