漫画『ゴールデンカムイ』などでアイヌ民族への関心が高まっている。北海道大学アイヌ・先住民研究センター教授の北原モコットゥナシ(「シ」は小文字)さんに聞いた。AERA 2024年2月12日号より。
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アイヌ民族とその文化に対する関心が高まっている。大きく貢献しているのが、漫画『ゴールデンカムイ』だ。明治時代の北海道周辺を舞台に「不死身の杉元」と呼ばれる元陸軍兵士とアイヌ民族の少女アシリパ(「リ」は小文字)が金塊をめぐって争奪戦を繰り広げる壮大なストーリーは、2014年に雑誌連載が始まって以来、累計2700万部を超える大ヒットに。1月に実写映画も公開されている。
魅力はどこにあるのか。自身もアイヌがルーツで、原作の監修を担当した北海道大学アイヌ・先住民研究センター教授の北原モコットゥナシ(「シ」は小文字)さんは、アイヌの民具や衣装、宗教儀礼に用いる道具などが、模様ひとつをとっても精緻なリアリティーをもって描かれていること、アイヌの狩猟や採集の様子がサバイバルのノウハウとして生き生きと描かれている点を挙げる。
ウポポイもオープン
「アイヌについて『よく知らない』という段階から、具体的な生活の様子を知ったり登場人物に感情移入したりしながら、だんだんと『自分たちにも理解できる人たちなんだな』という当たり前のことに気づく。『ゴールデンカムイ』をきっかけに『もっと知りたい』と私の授業を受けにくる学生も多いです。アイヌを知る入り口として、大きな効果を持ったと思います」
2020年7月には北海道白老町に国立のアイヌ文化発信拠点「民族共生象徴空間(愛称・ウポポイ)」がオープンした。ウポポイとはアイヌ語で「(おおぜいで)歌うこと」。国立アイヌ民族博物館や国立民族共生公園などからなり、歌や舞踊などアイヌの伝統文化や宗教儀式、日常の食べ物等を体感することができる(=写真参照)。入場者は延べ100万人を超えた。
一方で、アイヌに対する差別や偏見は、いまもなくなったわけではない。北原さんも日常生活の中で、さまざまな違和感を持つことがあるという。