──MV制作でいちばん大事にしているのはコンセプトの部分ですか?

星野:うん、どの作品でもそこが大事ですね。前は自分で考えて提案することが多かったですけど、最近はアイデアを出してもらって、それをもとにディスカッションしたり、そのままそれを生かしたりすることが多いです。自分のアイデアだけだと、どうしても似たようなものになってしまう気がするので。作っていて、そのほうが楽しいです。

──以前のMV制作では、1コマ単位まで細かく編集にこだわっていましたよね。その部分も他の人に委ねることが多くなりましたか?

映像のグルーヴ

星野:編集に関しては今も自分でやることがあって、例えば曲のテンポで切り替えていく編集だとつまらないんですよね。グルーヴが生まれないんです。だからテンポをずらして切り替えていって、曲のグルーヴとは別の映像のグルーヴを作るとか、そういう作業はしたりします。ずらすことによってコーラス効果みたいな広がりが出るというか、映像のリズムが複雑になるんです。

──そういう話を聞くと、星野さんにとってMVとは、楽曲にプラスアルファして作るものではなく、ひとつの表現としてなくてはならないもののような気がします。

星野:本当にそうだと思います。人によっては、MVを宣伝の手段のひとつとして考えている人もいるかもしれませんけど、僕の中でMVは完全に自己表現のひとつなので。自分の音楽活動の枠の中に入っているものだし、作詞作曲と同じようなものとしてMV制作があるんです。

 しかも今は、音より先にMVを観る時代じゃないですか。TikTokやYouTubeショートで、誰かの映像に曲がついてるのを観て、初めてその曲を知る人もすごく多いと思うんです。そうなった時にMVは、その大本として重要になってくるような気がします。

実はポップスじゃない

 今は星の数ほど映像があって、それがすぐに消費されて、一瞬で次のものに切り替わっていく時代ですよね。MV制作をしていくのは大変だと思いますけど、だからこそアイデアを練るのは楽しいし、その中でどうすればずっと残っていくものを作れるのか、考えるのは楽しいですね。

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