今年で40歳を迎える俳優の田中圭さん。年齢や経験を重ねたことで芝居に対する視点や幅は広がったが、あえてそこには頼りたくないと言う。AERA 2024年1月22日号より。
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AERAの表紙撮影のため、ダンヒルのスーツに袖を通す。同じスーツ姿でも、「おっさんずラブ」で田中が演じる春田創一より、少しだけ凛々しく見える。「一時期はドラマの撮影でスーツを着ない日はなかった」そうだが、「普段はスウェットばかりなんです」と田中は笑う。
「移動も多いですし、どこでも寝られる楽な格好をコンセプトに選んでいます」
田中がデビューしたのは16歳のとき。俳優のキャリアは、今年で四半世紀に及ぶ。
2018年に「おっさんずラブ」で一躍脚光を浴びてからは、1年に計13作ものドラマ、映画、舞台に出演しながら、バラエティー番組にもレギュラー出演するなど、八面六臂の活躍を見せてきた。
今年1月からは続編となる「おっさんずラブ-リターンズ-」の放送が始まったが、前作から5年が経ち「自分も少しは落ち着いた気がする」と話す。
「自分がいち俳優として積み重ねてきた道程は、間違っていなかったなと思えるようになりました」
だが、「経験を重ねたからといって役の捉え方や演技の理解が深まっているかと問われると、正直怪しい」とも話す。
「自分がいいと思うものと、周りがいいと思うもののずれ具合が、年々広がっている気がします。でもそれは、時代や年齢が変われば違って当たり前なのかなとも思うんです。その差を埋めるのが経験や技術ということになるのかもしれませんが、僕はあんまりそこで勝負しようとは思わないんです。やっぱり上には上がいると思うので。それよりも自分の生理、肉体から発する部分を大切に演じたい。技術で魅せるだけだと、俳優という刺激的な仕事が退屈になってしまう。それはすごくもったいないなと思います」
(ライター・澤田憲)
※AERA 2024年1月22日号