杉浦良美さん
杉浦良美さん
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 多大な反響をいただいた“ボイトレの杉浦先生”へのインタビューもこれが最終回。
「いかに力を使わず、気持ちよく歌うか」、かわいらしいイラストとあわせて、そのメソッドの一部を紹介する。

杉浦 発声はやっぱりクラシックじゃないと鍛えられないんですよ。そこをわかってない人が多くて、どうしても声を張り上げちゃったりしちゃうんですけど。要は力を使っちゃいけない。必要なのは声帯を引っ張る力だけ。どれだけ脱力するかということが大切なんです。
 アイドルのボイトレでも、「力を抜くための腹式呼吸がすごく大事」ということを最初に座学で説明します。「こういう仕組みになっているからこうだよ、だからこの情報は間違っているんだよ」と。この前もアンジュルムに3時間講義しました。1時間ずっとしゃべった後に、

「飲んじゃいけないものって何か聞いてる?」と尋ねたら
「ウーロン茶」と答えた。
「どうしていけないの?」
「脂を流すから」
「どこに脂があるの」

って質問して、のどの仕組みを説明して。体の構造をきちっと勉強していれば誰でもわかることなんですけど、意外とボイトレの先生でもそういうことをわかってない人が多いんですよ。クラシックをやってたら常識なんですけど、意外とご存じないポップスの先生も多い。基本、採っていけないものはないんです。耳鼻科の先生からすると一番良いのは水。のど飴も舐めた後は水で流してベタベタ感をとったほうがいい。唯一、私が歌う前によくないと思っているのはメロンぐらいですね。息を吸うとむせるんですよ。あのケバケバした部分がのどにくっつくんだと思うんですけど。

 薬だと思えば薬だし、毒だと思えば毒なんですよ。人間の体ってそういうふうにできてたりするので、たとえばウーロン茶を飲むとなんかイガイガするって思ったらそれはやめたほうがいいです。ウーロン茶がのどにいいと思えば飲めばいい。ただ医学的に言うとどちらも何の根拠もないんです。

――“俗説”ほどキャッチ―なことが多く、それゆえ信じ込んでしまいがちになるということでしょうか。勉強になります。

杉浦 私のメソッドを、ずっと昔から本にしたいとかDVDにしたいとか思ってはいるんです。私はレッスンする時、絵を描いて説明します(画像参照)。昔は理屈を教えてたんですが、絵を渡す方がわかってもらえるんです。「キャー、かわいい」とか言ってくれますよ。(iPadを開く)

――魚と猫のイラストが出てきましたが、これを使って説明なさるのですか?

杉浦 そうです。魚は音を響かせるポジションの説明に使います。一方向のイメージに過ぎませんが、体全体の声の通り道と響きのポジションを目で見て明確に意識して響かせることで、無理しない楽チンでマイク乗りの良い声が出るのです。は脱力のイメージに使います。これもこれだけで全てではありませんが、まずは力を抜くことをやってみる。常に

「どれだけ楽して声を出すか」、
「どこの力を抜いてどこの筋肉を引っ張らなくてはならないか」

をやはり明確に体に意識する。そして口頭で説明できることが必要なんです。だから音楽は頭が悪いとできない。あ、また過激な発言ですね(笑)。
 ボイトレの本はいろいろ出ていますが、けっきょく難しいし読みにくい。だからわかりやすい切り口で、できたらなと思います。

――「無理のない発声で、気持ちよく歌を歌うためのメソッド」ですね。アイドル唱法の手ほどきではなく……。

杉浦 このまえ誰かに「アイドルの歌い方ってどういう風にすればいいんですか」って聞かれたんですけど、「アイドルの歌い方」がどんなものか知らないし、そんなものを私は一度も教えたことがありません。勘違いしてるんじゃないか、と答えました。生徒には世界で通用する歌を歌ってほしい、それだけです。[次回8/10(月)更新予定]

■杉浦良美さんのホームページ
http://www.sugiura-method.com/