VRを使ったバイクの展示走行。画面にはヘッドセットの映像が映し出されている
VRを使ったバイクの展示走行。画面にはヘッドセットの映像が映し出されている
セイコーエプソンの「MOVERIO」体験ブース</p>

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セイコーエプソンの「MOVERIO」体験ブース
スコープにスマホを入れるだけで、気軽にVRを体感できる
スコープにスマホを入れるだけで、気軽にVRを体感できる

 最新の映像・音楽・VR(バーチャルリアリティ)技術が集う「第1回先端コンテンツ技術展」が7月1日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催した。会場内では、現実に近い仮想空間を人工的に作り出すVR技術を用いた体験型の展示が数多く行われた。

 「セイコーエプソン」のブースでは、メガネ形のウエアラブル端末「MOVERIO」を使った体験コーナーが行われていた。「MOVERIO」は2014年6月に発売した製品。メガネをかけることで、大画面で映像を楽しんだり、メガネ越しにさまざまな情報を映し出したりできる。体験コーナーでは、実際に企業で活用している例を体験できるというので、早速試してみた。

 顔に「MOVERIO」を装着して、アプリケーションを立ち上げると、目の前に石垣の映像が広がってきた。司会の説明によれば、この石垣は現在では皇居の中にある、江戸城天守閣跡のようだ。映像は360度にわたって広がっており、自分が後ろを向けば、後ろの映像が目の前に映し出される。左右だけでなく、上下にも映像が広がっている。空を見上げると、石垣の上にあるはずがない天守閣がそびえ立っていた。江戸城の天守閣は1657年の明暦の大火で焼失して以来再建されておらず、約360年ぶりにその雄姿を現したのだ。

 この映像は、近畿日本ツーリストが観光用に作成したもの。現存しない建物も、VR技術で復元して、観光に役立てられるようだ。CGで作られた天守閣はCG、一見実写と見分けがつかないほど精巧に作られている。天守閣の横の空には、白字で天守閣に関する説明まで書かれており、非常にわかりやすかった。

 続いて目に留まったのは、ゴーグルのようなものを着けて、バイクにまたがる人の姿だった。どうやら、VRを使ったバイクの展示走行を行っているようだ。ゴーグルのようなものはVR映像を映すヘッドセットだった。「プロトタイプ」という企業が、主に空間演出を手がけていた。それにしても、このバイクを使った展示は何に使うものなのか。

「実はこれ、バイクのモーターショーに出展したものなんです。モーターショーに出たいと思っても、通常はバイクが作れなければそれはできません。そこで、バイクの模型を用意して、VRを使った展示走行という形をとることで、それが実現したのです」(プロトタイプ担当者)

 モーターショーに出展した結果、好評を得て、米国のバイクメーカー「ハーレーダビッドソン」からコラボレーションの依頼がきたそうだ。その結果、実物のハーレーのバイクに跨がり、実際にエンジンをかけて、VRの世界を走行するという、風変わりな企画が実現したという。

 プロトタイプのブースでは、VRのヘッドセットに米オキュラス社の「オキュラス・リフト」が使われていた。これはまだ開発者向けしか売られておらず、価格も10万円近くする。また、冒頭で紹介したエプソンの「MOVERIO」も約7万円もする。VRを楽しみたいと思っても、なかなか手が出ない値段だ。

 そう思っていたところ、「バーチャルリアリティ体験をスマートフォンで。」と書かれたブースが目に飛び込んできた。

 このブースは、、VRに対応したコンテンツを製作する企業のカディンチェと、印刷会社の星光社印刷が合同で出展した。カディンチェはスマートフォン向けのVR動画を、星光社印刷は厚紙でできた、スマートフォン用のスコープをそれぞれ提供している。このスコープにスマートフォンを装着してVR動画を再生すれば、スマートフォンでもVRを体験できる。左右や上下の動きもスマートフォンが検知するので、映像を360度見渡すことも可能だ。

 アンケートに答えると、無料でスコープがもらえるキャンペーンを行っており、ブースはにぎわっていた。星光社印刷の担当者は次のように話している。

「予想よりも多くの人がブースに来ており、スマホでVRを体験することへの関心の高さがうかがえます。スコープを市販するかどうかは未定ですが、関心の高さを市販化に向けた励みにしていきたい」

 アンケートには、スコープを市販した際、妥当と思う価格を書く項目もあり、苦悩ぶりもうかがえる。需要が十分にあることはわかってはいるが、印刷会社という性質上、市販するルートを一から構築するのは簡単ではないようだ。雑誌などの付録にする案もあるという。

 今後、VR技術がどのように応用されていくのか、目が離せない。

(ライター・河嶌太郎)