役員応接室で語る仲真紀子さん

 私は鉄腕アトムで育った世代で、お茶の水博士にあこがれて高校生のときは理系だと思っていたんですが、ちょっとひよって心理学に行ったんですね。長い話になっちゃいますけど、高校のときアメリカに1年間留学する制度があって……。

――はい、AFS(国際教育交流を進める民間団体の一つ)ですね。

 そうそう、それで1年米国に行って帰ってきたら数学を忘れてしまっていて(笑)。父は建築会社に勤める建築士で、私も建築みたいなことをやりたいなと思い、お茶の水女子大学には美学というのがあって、そこに行ったら建築物を美学的な観点から研究できそうだということで哲学科美学専攻に入りました。

 これはオフレコかもしれませんけど、好きだった男の子が心理学をやっていて、恋心とあいまって心理学に関心を持ったんですよ。行動実験とかをするので、理科系っぽい部分もある。あ、こっちのほうが向いているかもと思って、1年生の終わりに哲学の先生に「関心が変わりました」って言ったら、2年生から心理学科に移らせてもらえた。でも、その男の子にはあっさりふられて、心理学だけが残ったみたいな(笑)。

――へえ。

一人旅をしているときに知り合った

 私は一人旅が好きで、それも心が落ち着いていないから、旅をして自分のことや将来のことを考えようとしていたんだと思うんです。あのころはユースホステルを利用して、そこで出会った若者どうしが何日か一緒に旅をしていました。そうやって知り合ったのが旦那です。

――どんな方だったんですか?

 私より3つ下で、私は高校で留学して学年が1年遅れているから、出会ったのは私が4年生にあがる春休み、彼は2年生にあがるときでしたね。筑波大学で生物を勉強していました。細胞膜とかシナプスとか。今はコンピューターを使った生物情報学が専門になっています。埼玉県出身で、筑波大の寮で生活していた。

 それで私が修士1年のときに結婚しちゃったんですよ。私は若いころ、妹のほうが親に可愛がられていていいなあと思ったり、なんか暗かったんです。今も陰キャだと思うんですけど。

――え? 全然暗くないですよ。

 そうそう、そういう感じはしないですよね。でも、昔はもっと孤独で、何のために私はここにいるんだろう、とか思って、今から思うとせっつくようにして(笑)、結婚したんです。

――彼は何て言ったんですか?

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「わかった。じゃ、結婚しよう」