劇団員死亡についての会見で頭を下げる宝塚歌劇団の幹部ら(2023年11月14日)
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 公表されたのは、衝撃的な数字だった。文部科学省は10月4日、「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(いじめ関連部分抜粋版)」を公開した。

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 同調査によると、2022年度に小・中・高校、及び特別支援学校における、いじめの認知件数は68万1948件。前年度は61万5351件だったので10・8%の増加となり、過去最多を記録した。

 いじめの被害者が心身に重大な傷を負う「重大事態」の件数は923件。こちらも30・7%の増加で過去最多となった。

 集計期間は異なるが、22年に全国の警察が認知した刑法犯は60万1389件。20年ぶりに増加に転じたことがニュースになったが、いじめの認知件数のほうが約1万4000件も多いことになる。

 刑法犯の認知件数よりもいじめの件数の方が多いという現状は、子どもを持つ親でなくとも「学校で一体何が起きているのか」と疑問に感じるだろう。

 いじめの問題について取材を重ねてきた元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は現状をこう分析する。

「2011年に大津市、18年に名古屋市、21年に旭川市などで重大ないじめ問題が発生し、被害者が亡くなるという痛ましい事件が起こりました。それにより、いじめへの社会的な関心が高まり、過去最多などのニュースも大きく報じられるようになりました。おそらく、本年度も過去最多を更新する可能性が高いと見られています。しかしながら、私がいじめの取材や調査で教育現場を回っても、いじめ自体が増加しているという実感はないのです」

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