とはいえ、提供されなかったグループのノンアル摂取量が変わらなかったように、飲み方を変えようと考えていない酒飲みは、わざわざノンアルを買いには行かないだろう。

 ノンアルの魅力に気づき、減酒を習慣化するには、やはり手元にいつもノンアルがあることが重要だ。

 お父さんが飲み過ぎなら、冷蔵庫にいつもノンアルを入れておいてあげる。酒飲みの知人に、お中元やプレゼントでまとめて送る。ノンアルの試飲会を開いて、おいしさを知ってもらう。さまざまな工夫が求められると、吉本さんは話す。

世界でも例がなかった

 実は、ノンアルコール飲料の飲酒量に対する影響を調べた研究は世界でも例がなかったという。

「まだまだ研究の途上です。今後は、アルコール依存症の患者さんにノンアルが有用かについての研究をしてみたいと考えています」(吉本さん)

 酒好きと依存症の距離は皆さんが思っているよりずっと近い――。アルコール依存症の専門医の言葉だが、飲み方に不安を感じている人は、試しにノンアルに“頼って” みても良いかもしれない。

(AERA dot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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