棟方作品は今なお多くの人を引きつけてやまない(写真は今年7月、青森県立美術館)

 我(ワ)は、ゴッホになると、絵を描きはじめた志功さんはこうも書いている。

「ゴッホのひまわり(ゝゝゝゝ)、グルグルして目の廻るような、輝きつづく、あんなひまわり(ゝゝゝゝ)の絵が描きたかったのです。(略)一昨年、オランダに行ったとき、ゴッホのひまわり(ゝゝゝゝ)の絵のごく側に、わたくしの板画が陳列されていました。それを想いこれを想い、ただ泪(なみだ)が止まりませんでした」(同)

 お洒落な志功さんは眼鏡をいろいろ新調していた。

 棟方展では折り畳み式の眼鏡も陳列されていて、その横に双眼鏡もあった。なんと双眼鏡でテレビを観ていたという。二つの眼鏡を二重にかけて人と話している写真もあった。

 志功さんの板画を眺めていると、描かれた人物のどの目もカッと開いている。それは志功さんが眼鏡を手にした子ども時分に体験した「パアッと明るくなって、新しい世界がひらけた」という瞬間を表しているのだと思った。

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