落語家・春風亭一之輔さんが連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今回のお題は「熊」。
ここのところ連日「熊が市街地に現れた」とか「熊に襲われ負傷」なんて熊関連のニュースが話題になっている。「熊を殺すな」なんてクレームの電話が県外から当該自治体にバンバン来るらしい。「お前ら熊の恐ろしさを知らないからそんなこと言えるんだ! だったらここに住んでみろ!」と、そりゃ熊が出没する地域の人はそう思うだろう。
私の住んでる地域に熊は出ません。実家近辺にも出ません。でも、もし万が一、熊が出たら……というくらいの想像力はあるつもりです。やっぱり駆除して欲しいと思うだろう。怖いもの、熊。みんな『銀牙 -流れ星 銀-』読んでないのか? 赤カブトとファミマの前で出くわしたらどうすんだよ? 『ザ・ワールド・イズ・マイン』読めよ。渋谷のハロウィンに集まる若者対策なんてヒグマドンに来てもらえば一発で解決しちゃうくらい熊は怖いのだ。渋谷の交差点、大変なことになるべさ!
まず熊の怖さを知って欲しい。やはり幼いころの刷り込みは重要です。子供たちが最初に接する熊は……おそらく「プーさん」でしょう。そりゃ令和五年に「レオナルド」ではないはず。プーさんが呑気すぎる風貌だから「熊=可愛い」と思い込んでしまうのです。だってレオナルドの熊さんなら、怖いもん。親しみやすそうでいて、本当は怖いもん。昭和のストリップ小屋からの叩き上げのコメディアンの眼をしてるもん。だからレオナルドの方の熊さんはそのままでいいのです。問題は「プー」だ。今からでも遅くない……あのプーさんには少し手を加えて、子供たちに熊本来の危険な空気を感じさせ、熊への用心を啓蒙しましょう。これは大切なことです。