この記事の写真をすべて見る
定番の低価格レンズが
レンズ構成そのままに近代化
一昔前は一眼レフ入門レンズの代名詞だった50mmF1.8のモデルチェンジである。カメラボディーと組み合わされるキットレンズの主流がズームレンズになって久しく、影の薄い存在になりながらも四半世紀のロングセラーになったというから驚きだ。
主な変更点は、デジタルに適したコーティングの採用、マウント部材の金属化、オートフォーカス駆動がSTMモーターになったことで、基本的な光学設計は前モデルを継承している。駆動系の変更により、繰り出し量が増えたことで最短撮影距離が10cmも短縮して撮影倍率が0.15倍から0.21倍にアップしているのと、以前よりも2枚増えた7枚羽根の円形絞りにより、ボケ味が軟らかくなっており、これらを生かせば撮れる画が全く異なるレンズへと進化している。
銀塩時代のものから最新のレンズコーティングへの変更もモデルチェンジの目玉ではあるが、もともとフードさえつけていれば直接太陽や強い点光源でも画面に入れない限りフレアやゴーストに悩まされることは多くなかったと思う。それよりもSTMモーター搭載によりAF駆動時はピントリングが回転しなくなり、シングルAF時のフルタイムMFでピント操作できることによる使い勝手の向上が、今回のリニューアルをもっとも体感できる部分だ。明るい日中で光量減目的のNDやPLフィルターを使うことも多いだろうが、EFレンズではあまりなじみのない49mmというフィルター径になったのは残念。
純正EF単焦点50mmレンズには、上位に絞り開放F1.2とF1.4が存在し、3本立てのラインアップは変わらない。LレンズのF1.2は別格だが、F1.4クラスはシグマの50㎜ F1.4 DG HSMのような高性能(で価格も高い)レンズも注目されている。そうした現状では、ずっと低価格で手にしやすい最新型50mmF1.8というスペックは大口径単焦点の入門レンズとして、今まで以上に存在感を放ちそうではある。また、APS-CサイズのセンサーのEOSユーザーにとっては特にポートレート用途などで約80mm相当の画角と大口径と円形絞りのもたらすボケ味が歓迎されるはず。
◆宇佐見 健
* * *
●焦点距離・F値:50mmF1.8●レンズ構成:5群6枚●最短撮影距離:0.35m●最大撮影倍率:0.21倍●画角:46°●フィルター径:Φ49mm●大きさ・重さ:Φ69.2×39.3mm・約160g●価格:税別1万9500円