民間人をもターゲットにしたハマスの奇襲攻撃に対する報復が、ガザ地区を瓦礫の山にするような掃討作戦になるとすれば、それは現代のゲルニカとしか言いようがありません。
ガザには縦横無尽に地下トンネルが走っていると言われています。追い詰められた人々がそこに逃げ込む姿を想像すると、地下水道に逃げ込む絶望的なワルシャワ蜂起のレジスタンスの非情な姿を描いたポーランドのアンジェイ・ワイダ監督の映画「地下水道」が目に浮かんでくるようです。
こうした悲劇が世界注目の中で繰り返されるとすれば、人権や法の支配といったスローガンはただのプロパガンダに過ぎなくなってしまうはずです。そしてゲットーやホロコーストという、未曾有の悲劇的な体験をくぐり抜けてきたユダヤ人の国家が、規模は小さくても同じような蛮行を反復しようとしている歴史のアイロニーにやり切れない気持ちにならざるをえません。
それでも、とにかく即時停戦を叫ぶ必要があります。
※AERA 2023年10月23日号