岩井監督ならではの美しい映像とともに壮大な物語が描かれる。「できる限り撮影し尽くしたいと思った。そう思えたのは、キャストのみんなの力のお陰です」(岩井監督)(撮影/篠塚ようこ)
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 10月13日から公開される映画「キリエのうた」。出演者のアイナ・ジ・エンドさんと松村北斗さんが岩井俊二監督と対談した。AERA 2023年10月16日号の記事より。

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――二人にとって「キリエのうた」はどのような存在になったのか。

アイナ:私は8年ほどBiSHというバンドで活動し「BiSH以外は何もいらない」と思うほど大切に思っていたんです。「キリエのうた」の撮影は2022年に行い、「BiSH」は今年6月に解散したのですが、「キリエのうた」に参加したことと「BiSH」として活動できたことが、いまのところ人生で一番大切な宝物の記憶になっています。

松村:何かと比べるわけではないのですが、自分にとってはトップクラスの思い出です。完成した作品を観ると、自分のできなさや不甲斐なさを感じ、悔しい思いもしました。でも、その悔しさは「力を出しきれなかった」というものではなく、単純に僕にはあれ以上のパワーがなかった。「未熟だな」と思いましたし、岩井さんには四六時中、弱音を吐いていました。

岩井:「大丈夫ですか?」とはよく聞かれましたが、全然大丈夫だと思ったので、「大丈夫だよ」と答えていたよね。

松村:未熟であっても、それを関係ないくらいにしてくれたのは岩井さんの演出の力であったり、撮影スタッフの方々の力であったり。助けて頂いたことばかりだったな、と思います。

アイナ:私は曲をなかなか完成させることができず、お待たせしてしまって。でも、「他の人に楽曲をお願いする手もあるけれど、アイナさんが作ったほうがいいと思います」と、待ってくださったんです。デモを送るのは、裸を見られることよりも恥ずかしいことなので、送ろうとすると手が震えてしまって。深夜の勢いで送ったところ、とても温かい言葉ですべてを肯定してくださる文章をすぐに返して下さったので、救われました。

岩井:映画ができ上がった時に「本当はこの曲も自分で書けたのに」と後悔させてしまうと、ご本人にとって一番つらいのではないかと思ったので、お忙しいなか申し訳ないと思いながらも頑張っていただきました。

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